2011-05-27

NIKKEI Archives<Classic modern>.

<トム フォードのイチ押しは、クラシカル・モダンなドレススタイル>
『クラシックをルーツとする王道スタイル』

 
トム フォードのプレスルームでプレタポルテ(既製服)のサンプルを見せてもらった。アイテム展開のバランス、色出しの絶妙さ、ツボを押さえたデザインモチーフなど、全身に電気が走るような衝撃を覚えた。気になるものをすべて試着させてもらい、一瞬にして彼の作る服の世界に引き込まれた。
 ドレスもスーツもカジュアルも、奇をてらわず、正直な服ばかり。すべてイタリアメイドで、ドレスやスーツは伝統的なブリティッシュ・スタイルをベースにしている。カジュアルは対照的にずっしりとタフなアメリカン・ヴィンテージ基調。ただ双方とも、クラシックをルーツとするメンズファッションのベーシックウェアばかりだ。
 クラシックこそがこの時代の最先端のモードと説き、2004年のコレクションを最後にクリエイティブ・ディレクターを務めていたグッチグループから離れたトム・フォード。次なるメンズファッションの高みを目指して彼がたどり着いたのは、男服の本質を突く王道スタイルの提案だった。

 スモーキング・ジャケットなど、フォーマルを展開するドレススタイルがたまらなくいい。イタリアにある名うての工房を使い、ショルダーラインや袖付けなど仕立てにこだわりが見られる。打ち込みのいいしっかりとした生地を用いて、シルエットが繊細で優美なのもいい。クラシックなアイテムを、細身のラインでモダンに仕上げ、ダイナミックでストレートな服作りをしている。
 ブランドとしてトム フォードを最初に意識したのは、2008年に公開された映画「007慰めの報酬」への衣装提供が決定した頃。アメリカ出身の元コレクションブランドのデザイナーが手掛けるタキシードを、正統ブリティッシュ・トラディショナルのアイコンである英・諜報員が着るのかと、違和感を覚えたものだ。
 ただ、それは自分が狂信的な007ファンや“ブリトラ”の支持者たちと同じ保守的な考えに陥ってしまったがゆえのこと。トム フォードの服を見もせずにそう感じていたのだから、今はスタイリストとして猛省している。
 フィアットの元会長ジャンニ・アリエッリの孫で、ワイルドガイとして鳴らすラポ・エルカーンなどは、そんなトム フォードに共鳴しそうなひとり。独自のファッション感覚を持ち、モードもカジュアルもスポーツもフォーマルも、もちろんクラシックも自在に操る洒落人だ。彼のような、時代の先端を行くファッション業界の洒脱な異端児にこそ、トム フォードを着て貰いたい。

コットン×シルクべルベットダブルブレステッド3つボタンスモーキングジャケット、コットンクラシックカラープリーテッドブザムスタッズボタンシャツ、ウールタータンプレイドイブニングパンツ、コットン×シルクグログランボウタイ、コットン×シルクグログランカマーバンド、パテントレザーイブニングパンプス、シルクポルカドットポケットチーフ、18Kホワイトゴールド×0.8Kダイヤモンド×オニキススタッズボタン、18Kイエローゴールドカフリンクス(すべてトム フォード)

Posted by  onodahitoshi

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